奄美の相撲研究の第一人者で琉球大学名誉教授の津波高志氏(76)の講演会「奄美の相撲の歴史と民俗」(奄美市教育委員会主催)が10月9日、鹿児島県奄美市名瀬の奄美川商ホール(奄美振興会館)であった。地域の文化や生活に根差し、組み相撲から立ち合い相撲に変化した奄美の相撲を「世界的にまれな変化」などと解説し、参加した地元住民ら約60人の知見を広げた。
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講演会は奄美市での国体相撲競技開催を記念し、同ホールに隣接する奄美博物館で開催中の企画展「日本一土俵が多い島 奄美大島~奄美相撲の歴史・文化~」に合わせて実施。津波氏は現在「令和版伊仙町誌」の民俗部会長や編さん審議会委員も務めている。
講演では、沖縄や東アジアなどで見られる互いに組んだ状態から始まり両肩が地面に付いて勝敗が決まる「組み相撲」と大相撲など現代の「立ち合い相撲」との違いや、競技として確立する「広域相撲」と地域住民が自由にルールなどを決める「集落相撲」の変遷などを文献や写真、新聞記事、島民の声などを交えて解説した。
津波氏は、奄美ではテレビが普及する前「浜辺で相撲を取るのが一番楽しかった」という島民の声や質疑応答であった「沖縄のキジムナーは三味線と歌が好きだが、奄美のケンムンは相撲が好き」という話にも触れ「奄美ほど生活に相撲が密着している地域は珍しい」と話した。
一方で奄美の相撲が、つかまえて投げ合う「組み相撲」から、本土の影響を受け「立ち合い相撲」に変化した点について「世界的にも非常に珍しい」とし「文化は変化することで活性化する」とも語った。
講演を聞いた奄美市名瀬の60代の女性は「沖縄相撲との違いなど知らないことも多く、楽しかった」と感想を話した。
相撲の起源や沖縄相撲、奄美相撲などを特集する企画展は29日まで、奄美博物館で開催中。通常の入館料で入場できる。
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