北限更新魚類を初確認
鹿児島県沖永良部島沖でこのほど発見されたチンヨウジウオ属の一種が、国内初確認であることが分かった。発見したのは鹿児島大学と共に調査を進めていたダイビングショップ「GTダイバーズ沖永良部島」(和泊町)代表の上原航知さん(45)。上原さんが標準和名を沖永良部島由来の意味を込め、「シューヤジリチンヨウジウオ」と名付けた。
調査には鹿児島大学総合研究博物館長の本村浩之教授をはじめ同館研究チームの荒木萌里さん、瀬能宏さんが関わり、調査成果をまとめた論文が8月7日付で日本動物分類学会が発行する国際学術誌「Species Diversity(スピーシーズダイバーシティ)」に掲載された。
同研究チームによると、沖永良部島では2016年から19年にかけて魚類の調査を行い、標本や写真に基づき637種の魚類を確認。361種が同島初記録とされ、うち国内初記録は20年3月のタツノオトシゴ属2種に続き、今回が3種目となった。
シューヤジリチンヨウジウオは、上原さんが19年11月、知名町田皆沖の水深15メートルの海底で、体長41・2ミリの雄1個体を見つけた。頭部前縁の突起が1本のとげ状で、体側に白い縦帯があり、頭部と体に白色点を持たないことなどが特徴。上原さんによると、和名には頭に白い矢の先端のような模様があるため、沖永良部島の方言で「白い」の意味がある「シュー」を入れた。
同種はこれまでにケニア、台湾、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニア、オーストラリア、フィジーでのみ記録されていた。今回の調査では、沖永良部島と小笠原諸島・父島で採集されていた標本が同じ種とされ、緯度が高い沖永良部島での確認が北限更新記録となった。
本村さんは「チンヨウジウオ属という吻(口先)がほとんどない特異的な形態をしたヨウジウオで話題性のある生き物。サンゴに依存して生活する種なので、サンゴ礁や環境保全の指標となる魚でもある。この種が沖永良部島で確認されたということは、同島周辺ではサンゴが健全な状態であるということでもある」と初確認の意義を強調した。
上原さんは「沖永良部でなかなかこういうことはないと思っていたが、継続して調査をしていると、まさかと思うことがある」と新発見の喜びを表現し、「自然が残っているという指標にもなるので、今後も新しい種を見つけるというよりはこの種がどうなっていくかを継続して観察しなければならないと思っている。増えていったら喜ばしいこと。日々の積み重ねが新発見にもつながれば」と意欲を語った。
写真説明「シューヤジリチンヨウジウオ」
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